　一方、勇と別れた”横山たかし”は、あれから方々の店を梯子していた。
横山の専門は、どちらかと言うとお酒をがぶ飲みして、はしゃぐタイプなので女の子はいつの間にか
逃げてしまう。今日は、珍しくまだ女の子が一人、くっついているようだが・・・

　「勇のばかやろう、一体何処に行きやがった！とんでもない奴だ」と所狭しと怒鳴っている・・・
　「もういいでしょ、友達の事は、私がいるんだから」と連れ添っている女の子・・・
　「うるせいやい！　ルミ子は黙っていろ！」困った”たかし”である。もう泥酔状態である

　横山は、その歯に衣着せぬ喋りに何処に行っても人気者なのだが、一人になるとどこか落ち込む
ところがあるようだ。
横山は、勇と違って両親を早くから亡くし幼くして親戚に引き取られ大きくなった男である。
だから人一倍愛情孤児なのである。酔うとその寂しさのせいか、ホンネが出てしまうようだ。

　「よし、勇の後を追うぞ！ルミ子も一緒に来い」と足をふらつかせながら、意気込む！
　「しょうがないわね、もう飲みすぎよ！そこの喫茶店で小休止しましょう」とルミ子

　横山も、口とは裏腹に云う事を利かなくなった足に業を煮やし、ルミ子の肩に持たれ歩いていく・・・　。
喫茶店に入り席に着くかつかないうちに”たかし”は眠りに落ちてしまった。
ルミ子は母性本能を刺激する、そんな”たかし”をどうやら好きになったようだ。

　「まあ、変な奴につかまっちゃたけど、このまま放っておけないし」と見守るルミ子がいた。

　ルミ子は、容姿端麗才女の誉れ高き女性であるのになんで、横山たかしと一緒にいるのだろうか？
時間を巻き戻して、その経緯をお話しましょう・・・・
　ジプリの公園で別れた後、横山はホームレスの親父に絡まれていたルミ子を見つけた。
ルミ子を助けようと思い二人の間に入ってみたが、どうやら絡まれていたのは、ホームレスの親父の方で
あった。

　「・・・こんなところでホームレスしている暇あったら、公園の掃除でもしなさいよ！」とルミ子は仁王立ち！
　「お嬢さん、僕はいいから隣のホームレスに云ってよ！」とホームレスは返事している。
　「貴方は、今、タバコをそこにポイ捨てしたでしょ、だから貴方に云ったのよ・・」
　「うるせいな、ほっとけよ俺の事は・・・関係ないだろ！」と親父はルミ子言い捨てる。

　最近始まった駐車違反の民間監視員と違反者の会話に近いものを感じたが・・・・
ルミ子は、ホームレスの言葉を待たず、ジダンの如く相手に頭突きを食らわしていた！
そこで審判よろしく横山たかしが間に入り、ルミ子にレッドカードを渡したのである。
倒れたホームレスを尻目に、二人はジプリの公園をさっさと後にした・・・

　「やっとすっきりしたわ！　皆、ホームレスの悪業を見て見ぬふりするから・・・」
　「傍で見ていたら、ホームレスの方が絡まれていたように見えたぞ！」
　「ところで、貴方は何者なの？」とルミ子
　「自己紹介が遅くなったけど、俺は”横山たかし”２５才、独身でハンサム、天才の三拍子揃っている」
　「私は、”大柳ルミ子”20才、独身、美人、博学とスポーツ万能の四拍子揃っているわ！」
　「うう、負けた！三拍子を上回っていたか・・・四拍子とは・・・・」
　「私の家来に取り立てて上げるから、ついてきなさい！」

いつもは毒舌では負けた事がない横山であったが、完全にルミ子に一本取られたようである。
さてさて、この後二人には何が待ち受けているのであろう、神のみぞ知るである・・・・・・